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これまでも、これからも、 地域から愛される場所に
-こども編集部(複合施設heso.内)・垂水区塩屋町-

まちの目印だった酒屋

山と海に挟まれ、のんびりとした雰囲気の漂う垂水区塩屋。神戸のいいところがギュッと詰まったこのまちに魅了される人も多く、近年では移住者も少しずつ増えています。そんな塩屋エリアの玄関口、JR・山陽電車塩屋駅から北側へ10分ほど歩いた坂道の途中に、「LIQUOR SHOP KIDENA」と書かれたレトロな建物があります。

昭和30年代に建てられたこちらの建物では、もともと現在の所有者である貴伝名(きでな)孝司さんのお父さんが「貴伝名酒店」を営んでいて、家族の住まいでもありました。複数の世帯が住める複雑な間取りのこの建物では、一時は7世帯が暮らしていたそう。しかし、だんだんと住む人が減り、家業の酒屋も店頭販売から配達が中心となり、10年ほど前からは貴伝名さんが倉庫として使うだけの場所になっていました。

「もう住んではいませんが、生まれ育った実家でもあるので、何でもいいから有効に使ってもらえる方法がないかなと思っていました」と貴伝名さん。地域の方々にとっても、見慣れたこのお店が姿を消してしまうことになれば、寂しく感じる人も多かったことでしょう。どうしたものかと思案していた貴伝名さんの元に、この建物にポテンシャルを感じる人が現れました。


古い建物に感じたポテンシャル

「レトロな魅力のある建物が、まちからどんどん消えていってしまうのが寂しくて」と話す渡邉彬之さん。当時は神戸市内の会社に勤め、仕事で忙しく過ごす中、「何か楽しいことをしたい」と考えていた時に、友人たちとの会話をきっかけに、この建物をリノベーションし、さまざまなお店や活動が集まる場所にできないかと思い立ちます。「何人か仲間がいたのですが、結果的になんとなく私が代表を務めることになりました」と、渡邉さんは苦笑交じりに振り返ります。

リノベーションが進み始めたのは2021年の春から。資金不足を補うため、人手を募ろうとしたものの、コロナ禍の影響で仲間集めにも苦労したと言います。それでも、仲間たちや近所の子どもたちと共に壁を壊したり、壁を塗るなどして、少しずつDIYを進めていきました。同時に、改修後にお店をオープンしてくれる人を探し始めます。


子どもたちの「サードプレイス」を

渡邉さんが忙しく動き回る中、プロジェクトに加わったのが、同じ塩屋で2020年から「こども編集部」という活動をされていた金井智美さんでした。「こども編集部」とは、小学5年生から中学3年生の子どもたちが記者や編集者となり、パンフレットなどさまざまなメディアを制作する活動。神戸市や山陽バス、その他企業と一緒に制作を進めることもあります。

「思春期の頃に誰もが感じるモヤっとした感情を表現するために、学校での勉強やクラブ活動とはまた異なる場所が必要だと、大学生の頃から感じ続けていました。幸いにも私はカメラと出会えたことで自分の表現方法を見つけることができた。そんな風に、子どもたちが自分にフィットする表現方法に出会う場所になれればいいと思っています」(金井さん)

「こども編集部」は活動の拠点を探していたため、月に数回、この建物を使わせてもらえることに。渡邉さんとしても、「こども編集部」に無償で場所を貸し出すことを条件に神戸市の支援制度を利用することができ、「こども編集部」が使用する2階のトイレや階段など、DIYでは難しい改修に補助金を充てることができました。


地域内外の人を結ぶ「ヘソ」に

こうした経緯を経て、2021年7月、1階に雑貨屋、花屋、古着屋(※現在は閉店)と貴伝名酒店の事務所、2階に「こども編集部」の活動場所となるレンタルスペースとネイルサロンなどが入る複合施設「heso.」として生まれ変わりました。平日はご近所の方を中心に、週末になると面白い場所があると噂を聞きつけた人たちが神戸市内外からやって来てにぎわいます。

「人の身体の真ん中にあるヘソのように、この建物は塩屋町のちょうど真ん中にあるので、ヘソの緒のように人をつなげられる場所にしたい」という想いから、この名前を付けたという渡邉さん。そのイメージは早くも実現されているようです。

「こども編集部」も元気に活動中。神戸市内を中心に、明石や西宮からも子どもたちが参加し、月に数回、編集会議をしたり、ワークショップを開催したり、新たな拠点を得て活動の幅は広がりを見せています。「今後はさらに地域の方との繋がりをつくっていきたいですね」(金井さん)

今後はバー営業など、夜の時間帯も積極的に活用していきたいという渡邉さん。塩屋を訪れるうちに大好きになり、ついには引っ越してきたというだけあって、まちの役に立つことなら何でもしたいと熱く語ります。「改修中、貴伝名さんが小さい頃に柱に文字を彫った跡を見つけました。ここで過ごしてきた人の温もりや建物の歴史を感じましたね。地域の方に親しまれてきたこの建物を、もっと利用していただけるようにしたいと思います」


~所有者の声~

 
こんな魅力があったとは思わなかった
若い世代が、自分たちにとっては珍しくないもの、例えば古いすりガラスを見て「可愛い!」と言ってくれて驚きました。新たな価値を見出してくれて、にぎわっているのが嬉しいです。
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