相談
無料

078-647-9900 相談時間:10時〜17時 定休日:水曜・日曜・祝日

文字サイズ

子供と大人の交流の場に

空き家活用には駄菓子屋がおすすめ

使い道が決まっていない空き家はあるけれど、どうやって活用しよう──。そう悩んでいる人もいるのでは。

「だったら駄菓子屋がおすすめ!」というのは、地下鉄海岸線「和田岬」駅から徒歩5分の住宅街で「淡路屋」という駄菓子屋を営む伊藤由紀さんです。

地元の子供たちの“行きつけ”となっているこちらのお店では、当時小学生だった常連さんが大人になり、結婚して自分の子供を連れてくることもあるとか。世代をまたがって愛され続けるのは、それ以上に伊藤さんの地元愛が満ち溢れているから、と言えます。

昔は町に必ずあった駄菓子屋ですが、その数はどんどん減り続け、今や“レトロで珍しい”存在になっています。そんな駄菓子屋がなぜ空き家活用に向いているのでしょう?店主の伊藤さんにお話を伺いました。


本当は駄菓子を置くつもりはなかった

ここ「淡路屋」は、伊藤さんのお祖母様とお母様が代々受け継いで来た食堂でした。伊藤さんが2人の跡を継いだのは1994年、24歳の時です。

「この場所を守らなきゃ」

ですが始めたのはクレープ専門店。周りは三菱重工などの企業や病院が多く、そこで勤める方々が買いに来てくれると踏んだからです。

ところが店を開けてみると、やって来るのは近所の子供ばかり。しかしサービス精神旺盛な伊藤さんは、来てくれる子供に喜んでもらおうと駄菓子を置き始めます。するとその数がどんどん増えて行き、ついにはクレープ専門店から“クレープも焼く駄菓子屋”になってしまったというわけです。

それから二十ウン年。いまも開店当初のまま“お姉ちゃん”と呼ばれる伊藤さんの店には、子供だけでなく老若男女、様々な人達が集まります。

「朝は近所のおじいちゃんおばあちゃん、昼は会社勤めの人がお昼を食べに、午後は小学生、中学生、高校生の順にやって来て、おやつを食べながら宿題したり、ゲームしたり。子供の居酒屋みたいな感じですね」

小学校から下校する子供が通るたびに、伊藤さんが「おかえり!」と声をかけています。子供たちも元気よく応答しているやりとりには、駄菓子屋を営むかたわら、地域の見守りとしても一端を担っています。


600万円をかけて補強工事をした理由

伊藤さんによれば、30円の駄菓子を売っても利益は3円。濡れ手に粟で儲かる商売ではありません。しかし伊藤さんは3年前、すでに買い取っていた隣続きの空き家を600万円かけて耐震補強・ロフトの増設・建具の変更等、かなり大掛かりな工事をしました。

神戸市から約200万円の補助金が出ましたが、残りの400万円は自腹。駄菓子を売ってコツコツ貯めた虎の子を使ってまで、なぜ空き家を活用しようと思ったのでしょう?

「この土地が好きだから。地元愛しかないですよ。まあ、いきなり(建物が)倒れられて、子供らに怪我させてもかなわんからね。それに子供たちが店の前で騒ぎだしたら近所迷惑になるから、隣(続きの空き家)に行かせるんですよ」

そううそぶく伊藤さんですが、そこには長年、地元・和田岬の子供たちをみてきた愛情が込められています。駄菓子と空き家を通じて、子供たちを中心とした地域住民の居場所になっているからです。

普段は子供たちが宿題する場所として使っていますが、月に一回「おかんアート展」の会場としても利用され、地域の交流・体験学習・創作活動の場として根付いています。


商売ではなく自分の作品を作っている

「駄菓子屋はやりやすい商売ですよ。飲食と違って調理の免許や保健所の許可がいらない。物を置いとけば売れるんです。場所だって、子供達の口コミだけが頼りだから、どこだっていい。そして古いままでいい。ソッチのほうが味がありますから。そして新学期になると毎年新しい子供達や親御さんが増えるというのも大きいですね。ホンマ、駄菓子屋おすすめですよ。ノウハウはいくらでも私が教えますよ」

もしクレープ屋のままだったら「おそらく続いていなかったかも」と伊藤さん。駄菓子を置くことでハードルが下がり、結果的にクレープの売上にもつながったからです。

実は駄菓子屋がおすすめな理由がもう一つあります。それは“地域の役に立てる”ということです。店に来る子供たちと、会話によるコミュニケーションが生まれるからです。

「親でもない、先生でもない、ただなんとなく話を聞いてくれる大人がいるって、子供には大事なことだと思うんです。社会貢献だなんて大層なことは思ってないけど、子供らの成長の中で少しでも役に立てれば、というのはありますね」

いまや子供だけでなく大人も含めた地域の交流拠点として、無くてはならない存在になっている淡路屋と伊藤さん。

隣続きの空き家を使って、“和田岬の案内所”も、アイデアにあるとのことです。近くの商店街にあるお店を紹介し、地域活性を図りたい想いがあります。

「もう商売じゃなく、空き家を使って自分の作品を作っているイメージですね。こうなったら生き様見せたる、みたいな。」

伊藤さん曰く、“自分のやりたい事”をチャレンジ的にやってみるにも、空き家がオススメとのことです。

あなたは空き家を使って、どんな作品を作りますか?

この支援制度を使いました!