相談
無料

078-647-9900 相談時間:10時〜17時 定休日:水曜・日曜・祝日

文字サイズ

畑を通じた多文化共生への第一歩

路地の中の空き地が畑に

神戸市の中でも空き地・空き家が多い長田区。また、その南部に位置する新長田はアジア諸国をはじめとする様々なルーツを持つ人が集住し ていることも特徴的な地域です。そんなまちに生まれたのが「多文化共生ガーデン」。

この地域に暮らすベトナム人コミュニティの10名ほどが運営し、パクチー、レモングラス、空芯菜など約15種類の野菜を育てています。

代表の金千秋さんは、コミュニティラジオFMわぃわぃの総合プロデューサーで、阪神・淡路大震災の時から定住外国人への情報支援を続けています。

路地の中にあるこの場所は、震災をきっかけに空き地となってしまい、長らく手付かずとなっていました。神戸市の空き家・空き地地域利用応援制度を活用することで、今では、ベトナムの人の憩いの場となり、野菜のお裾分けなどを通して、近隣との交流も生まれています。


ベトナムの人たちが自由に使える畑を

長田区内のベトナム人コミュニティの中心地のひとつであるカトリックたかとり教会の敷地内に、FMわぃわぃはあります。交流の中で信徒のトラン・ミー・トゥアンさんと知り合った金さん。ある日トゥアンさんから、市営住宅の空きスペースで野菜を育てていたら注意されたと相談を受けました。

「近くでおばあちゃんが同じように花壇に花を植えたら褒められるのに、自分たちは外国人だから怒られてしまったと本人たちは受け止めていました。また、以前からベトナムの人たちが駐車場などで野菜を育てていることについて、区役所を通して相談を受けていたんです。そ こで、彼らが自由に使える畑を作れないかと考えました」

その話を聞いた神戸市の応援制度の担当者から声がかかり、この制度を利用することに。アドバイザーとして、新長田で一級建築士事務所こと・デザインを営む角野史和さんを紹介され、2018年の夏頃から土地探しやワークショップを通した整備などを一緒に進めました。瓦礫や雑草で荒廃した土地を掃除する時は、教会の敷地内にあるベトナムにルーツを持つ子供たちのための学習支援教室に通う中学生たちに手伝ってもらい、他の日本人参加者の方たちと、一緒にバインミー(ベトナムのサンドイッチ)を食べて作業しました。

土地が整備されてからは、ベトナムの人たちによって、あっという間に土が耕され、2020年3月から本格的に農作業が始まりました。水道代や資材などの活動費は、2020年度より「長田区地域づくり活動助成」でまかない、金さんが申請や会計を担当しています。


自分の力を発揮できる場所の大切さ

農場長のトゥアンさんにとって、「多文化共生ガーデン」は、仲間と話したり、身体を動かしたり、寛げる場所。今は、コロナ禍の影響で教会のミサにも行けないこともあり、この場所の重要性が増しています。育てた母国の野菜をご近所の方と分け合うことも、トゥアンさんの楽しみの一つ。昨年収穫した大根は、ご近所にも好評でした。

「私が知らない間に、ご近所さんの名前を覚えて顔なじみになっていてびっくりしました。彼らはここに訪れる人たちに、この場所や野菜の説明を自発的に行っているんです。教える立場になることで、自分たちにもできることがあることを実感しているようです。自信をもって 語れることがあることの重要性を感じました。一人一人が持っている違う力を発揮できる場所がある社会こそ、共生社会だと思います」と金さんは語ります。

また、この場所がきっかけで、兵庫区の留学生・技能実習生などの、他のベトナム人コミュニティとも繋がったそう。教会の宗教を介したコミュニティ以外の、新たな関わりが生まれています。

また、多文化共生ガーデンは、助成金などの活用を通して、自分たちの払う税金がどのように使われているか知る機会にもなっています。金さんは「この活動を通して、このような補助金や助成金があることを他の外国人コミュニティに伝えてほしいですね」と話します。

ご自身も活動を広く発信するために、日本語、ベトナム語の両方でこまめにSNSを更新しています。


空き地探しから見えた多文化共生の課題

今回最も苦戦したことは「空き地探し」でした。候補地が見つかっても、所有者や自治会の高齢者の方に、「静かに暮らしたい」などの理由で断られることも。アドバイザーの角野さんは、「事前に周辺の状況をよく知って、地域の理解を得るステップがあると安心です」といいます。今回も、自治会への事前調整や、メンバーによる挨拶を徹底したことで、近隣とも良好な関係を築けています。

人が集まる場所を作ると、困る人もいる。そこに多文化共生の難しさを感じた金さん。異なる価値観を持った人たちが心地よく暮らすためにはどうしたら良いのか。課題はまだまだ残ります。金さんは、「だからこそ多文化共生ガーデンのような場所が必要だと思います。この場所が聖地とされるのではなく、地域に点在する当たり前の場所にならないと。これからも地道に活動を続けていきたいと思います」と話しました。

~所有者の声~

体力的・経済的・心理的に助かっています
管理の手間が無くなったのと、無償で貸すと固定資産税への補助が出るので、ありがたいですね。空き地のままで放置することで、近隣に迷惑がかかる心配もなくなりました。
この支援制度を使いました!
  • 神戸市営住宅集会所
  • みんなでつくろう空家リノベーション
  • 神戸・里山暮らしのすすめ
  • ひょうご空き家対策フォーラム
  • JTIマイホーム借り上げ制度